No place to go

どすこい音頭。

No title.

一昨日、公開初日に「心が叫びたがってるんだ。」を観に行って来た。

 

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○良い作品で、もう二度三度、観たくなる作品だなって印象だったんだけど、観終わって一日経って、パンフレットを読みながら、あらためて、「ここさけ」で自分が一番感じたこと、印象に残ったことは何なんだろう、と考える機会があった。結果、一番印象に残ったことはたぶん二つくらいあって。

 

○一つめは、誰かとの出会いがあること、自分を見てくれるひとがいるということ、誰かがくれたほんのささいな一言がきっかけで、人はいつからでも変わることはできる、ということ。
(順にとっては「歌だったら自分の本当の気持ち、伝えられるんじゃない?」という拓実の一言であったり)
 
○二つめは、しゃべれなかった順が、拓実との出会いによって自分の殻をうちやぶって、一生懸命に何かを周囲に伝えようとして行く姿を見て、拓実や菜月や大樹や周囲がだんだんと影響されて変わって行くこと。
自分が一生懸命にがんばっている姿によって、周囲の誰かたちの心に影響して行くことができるんだな、と感じた。いや、とても当たり前のことなんだろうけど日々の中で忘れかけていること。
 
○とにかく、少女の成長によって、止まっていた誰かたちの物語が動き始めて行くこと、その点に胸を打たれた。
 
前半から中盤までは、順が拓実と出会ったことによって少しずつ成長して行く……っていう成長物語みたいな所がおもしろいな、ぐっと来るな、と思ってみていて。
 
そういった思いの分、中盤以降に、順は拓実を好きなのに、拓実と菜月はまだお互いにどこか解ける前の雪…みたいなもんやりした「好き」の思いを抱えていて……っていうことが判明して行くと、くそーーー拓実、順に思わせぶりな態度とるなよーー恋愛要素絡んで来てややこしい感じで今までみたいにスカッとはみれないぞーー(; ・`д・´)っていう少しもやもや気分にチェンジしてしまった…のが事実。
だったのだが、最後に順が自分の本当の気持ちを拓実に叫んで、また、順と出会ったことで、拓実も菜月も自分の本当の気持ちをお互いに伝えられるように変わって行った…。
ということが、最終的にはなんだかとてもうれしくて。よかったね、よかったね(涙)って気持ちで、あのシーンではなぜか嗚咽が(笑)
 
告白して、思いが通じ合えなかった順にも、最後の最後で、大樹が自分の思いを伝えてくれて、観ている側的には救いだったなと感じた。
 
というか、今まで過去のトラウマが原因で人とうまくしゃべれなかった人が、誰かを好きになって自分の本当の思いを伝えられるようになる、って、本当すごい成長物語ですよ。
 
○…という、作品をみていて一番印象に残ったこと二つとも、「心の中にある本当の思いを伝える」という この作品のタイトルにもなっている主題とは少し離れている、脇にそれたことへの思いだったけど。この作品をみて、自分も心の内で思っている本当のこと、伝えなきゃな、という思いには自分は意識があまり行かなかったかな。
 
 
○逆に、響いた「出会う」ということの大切さ。ずっと自分の中にあるテーマなのだろうか。
「悪人」をみた時も、「本気で誰かと出会いたくてー」というフレーズが妙に響いて心に残っていて。それはたぶん、自分が人生で成し遂げられていないと感じている、自分にとって欠けたピースであるということの裏返しだろう。誰かと「出会う」ということが。
そう考えると、心の内で思っていることは大体正直に人に伝えられている / もしくは伝えられていなくても本人はあまり気にしていない(現時点では)、ということの表れなのかな。この映画の主題が自分にとってそこまで一発KOのパンチな感じでメインで響かなかったのは。
 
 
○「ここさけ」は、記号としてでなく瑞々しく丁寧に作品や出て来る人々が描かれていて、本当にどの登場人物もこの世界のどこかにいそうで、どの登場人物にも感情が入り込めるポイントがあるんじゃないかと観ながら感じていた。静かな水面にそっと指先から融けて行けるように、キャラクターの心にもそっと近づける瞬間。
 
○特に、自分は母親にはなったことないけど、順に辛く当たってしまう順の母親の気持ちがそのままシンクロするような時があったりした。
観終わった後パンフレットの吉田羊さん(順の母親役)が役について語る様子を読んでいると、あらためて順の母親が順に対して抱いていた気持ちに気付くことができたり、そうだよな、あの人には根本に娘を愛する気持ちがあるんだよな、とどこか感じていたことをあらためて言語化して認識できたり。
キャストさん達のコメントを読んで、そういうのをあらためて感じた上で、またもう一度、みてみたいなと感じた。
 
 
○台詞部門だと、順が拓実に自分の抱えてきた思いをすべてぶつけるシーンで、「傷付けていいよ、俺のこと」という拓実の言葉は、本当に殺し文句だなと思った。(台詞はちゃんと覚えてない、ニュアンス)
拓実は優しい。その優しさで順を勘違いさせてしまったりしたけど、でもその優しさは、平面的なものではなくて、もっともっと奥行きのある、誰かを受け入れるキャパシティの大きい、寛い心だと思った。優しさのz軸。こんな人が身近にいたら、きっと好きになるだろうな。
 
 
○それにしても、パンフレットで細谷さんが「昔から実写映画をアニメーションで表現したような、日常を描いた作品に憧れがあったんです」「そしてそういう作品で拓実役の内山さんと共演するというのが、密かな目標というか夢でもありました(笑)。それが叶ったのが嬉しかったですね」と書かれているのをみて、なんだかにやにやしてしまった(笑)
すごいファンという訳じゃないから、細谷事情と内山事情はよく知らないけど、細谷さんの夢がなぜ日常作品×内山くんというピンポイントだったのか…(笑) 何かそういうきっかけがあったの?
 
○でも、こういった日常作品での、拓実のような内山くんの演技はすごくよかったなぁと感じた。
もちろん、内山くん以外も、それ以外のメインのキャストさんのお芝居も全て含めて。アニメーションの映像をみていても、声をあてている中の人の顔が全く思い浮かばないのがいいな、と。すごく自然に映像と溶け合ってるというか。それは声優さんの力もあるだろうけど、やっぱり登場人物を丁寧に描いて映像の中で呼吸させる作品の力が大きいんだろうな、と感じた。